第51話
「俺なら、梅本にそんな顔はさせない」
頼斗の真剣なその声に、希美の心は揺らぎそうになる。
でも――
「彼が今いる所、私の家だから」
そこに行くなと言われたら、希美の帰る場所がなくなってしまう。
それに第一、
「桐生君が色んな女の子を泣かせてるの、今までに何度も見たことあるけど……それでも、そんな約束守れるの?」
頼斗のことを、そこまで信用していない。
「……」
言葉をなくした頼斗に、
「私に、これ以上期待させるようなことを言わないで」
希美が冷たく言い放つと、すっかり力のなくなった頼斗の腕から簡単に抜け出せた。
「じゃあ……お疲れ様でした」
自分の鞄を掴んだ希美は、そのまま教室を後にした。
1人残された頼斗は、
「……くそっ……!」
傍にあった誰かの机を、右手の拳で思い切り殴った。
ズキズキと痛む右手を抱え、
「なんで……」
自分の今までの行いを、激しく悔やんだ。
やっと気になる女の子を見つけたのに。
誰かを好きになることさえ出来れば、自分なら絶対に上手くいくと高を括っていた。
それが、実際は信用すら得られずに相手にもされないなんて。
全て自分の日頃の行いのせいだと分かっているだけに、
「なんでなんだよ……」
何故、好きでもない子たちと付き合ってきたのか、過去の自分が理解出来なくなっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます