第50話
「まだ学校に――」
『部活辞めたんじゃないの?』
スマホから聞こえてくる声は、大切な彼女に向かって話しているとは思えない程に冷たい。
「学級委員長の会議があって……」
『んなの、断ればいいじゃん』
「……ごめん……」
2人のやり取りを黙ったまま聞いていた頼斗は、
「……っ」
ギリッと奥歯を噛み締めた。
『とにかく、今すぐ帰ってくること。俺、もう部屋で待ってるんだから』
「分かった……」
通話を終えた希美は、酷く悲しそうな顔をしていて――
「梅本」
頼斗は希美を呼ぶと、
「!?」
希美の体を後ろからぎゅっと抱き締めた。
「き、桐生君!?」
希美は突然のことに驚いてパニックになる。
慌てて頼斗の腕の中から逃げ出そうともがく希美を、頼斗は更に強く抱きすくめた。
「行くな」
ぽつりと聞こえた頼斗の声に、
「……え……?」
希美は抵抗することをやめた。
「お前にそんな悲しい顔をさせるようなヤツの所に、行って欲しくない」
頼斗の言葉に、
(私、そんなに酷い顔してたのかな……)
希美は、ぼんやりとそんなことを考えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます