第49話

「どういうことをすれば女が喜ぶのかは知ってるけど……そういうのを、梅本には使いたくない」



ブスッとむくれたまま、頼斗は続けた。



「……梅本と他の女を、同じ扱いにするつもりはないから」



「……っ」



頼斗の口説き文句なんかに惑わされないと思っていたのに、希美は不覚にもドキッとしてしまう。



「……それも口説き文句のつもり?」



可愛げがない自覚はあったけれど、他に言葉が思い付かなかった。



「え? そんなつもりなかったけど……」



頼斗はきょとんとしながら希美を見つめた後、



「もしかして……今、ちょっとドキッとしてくれた?」



また嬉しそうに笑い、希美の顔を覗き込んだ。



「なっ……してないし!」



希美は慌てて顔を背けた。



「梅本……」



頼斗も立ち上がり、希美にそっと歩み寄る。



「俺と付き合おうよ」



頼斗が希美の手首を掴んで迫った瞬間、



――♪♪♪♪♪♪――



希美のスマホの着信音が鳴り響いた。



「!」



驚いた頼斗は、反射的に希美の手を離す。



「あ……ケンちゃんだ……」



ブレザーのポケットからスマホを取り出した希美は、表示されている名前を見てぼそりと呟いた。



頼斗から少し離れた希美は、画面に表示されている通話ボタンを指先でスライドさせた。



「もしもし……?」



『のんちゃん、今どこにいるの?』



静まり返った教室内では、希美の通話の相手の声も、頼斗にはよく聞こえた。

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