第48話

可能性なんて全くない、と否定されるかと思っていた頼斗は、希美の反応を見て嬉しそうに微笑む。



「じゃあ……俺のことをちゃんと見てくれるようになるまで、これから毎日梅本のこと口説くから」



そんな頼斗の言葉に、希美は睨みつけるようにして頼斗を振り返る。



「そういうことを軽々しく言うから、チャラいって言って――」



頼斗と目が合った瞬間、希美の言葉が途絶えた。



「やっと俺の目、見てくれた」



とても嬉しそうに微笑む頼斗に、



「……」



希美は、何も言えなくなった。



「多分、俺、梅本のことが好きだ」



「……!!」



頼斗の言葉に、希美はびくっと体を強ばらせた。



「だから、梅本のことをもっと知りたい。色んな顔を見たい」



頼斗の甘い声に、



「……?」



希美は違和感を感じた。



頼斗の声が、少しだけ芝居がかっているような気がするのだ。



「……今、必死に口説こうとしてる?」



「……バレたか」



頼斗は、チッと舌打ちをした。



「下手くそすぎるのよ! あなた、それでも本当に校内一のモテ男なの!?」



希美は慌てて椅子から立ち上がり、頼斗との距離を置く。



「仕方ねぇだろ! いっつも女から口説かれるばっかりで、口説く側になったことねぇんだから!」



希美からの下手くそという言葉に、頼斗はムッとして言い返した。

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