第45話

「そういえば、梅本は部活行かなくていいのか?」



頼斗は今更ながらにそんなことを思い出し、



「うん……実は、もう辞めようかと思ってて」



答えた希美の声は、とても暗いものだった。



「……なんで?」



昨年の夏のファッションショーを一緒に盛り上げた時の希美は、とてもキラキラしていて楽しそうだったのに。



頼斗はモデルで、希美は裏方という役割分担はされていたが、それでも観客よりも遥かに近い距離で見た希美は、頼斗の目にはとても魅力的に映っていたのに。



「帰りが遅くなるから、彼が良く思わなくて」



「……」



姫花から、希美の彼氏は束縛が激しいらしい、と確かに聞いてはいたが。



まさか、希美の学校での行動にまで口を出すとは。



「あっ……今の話、姫ちゃんには内緒ね! 心配かけるといけないから」



こんな時でも、希美が気にかけるのは姫花のことだけ。



目の前にいるのは姫花ではなく頼斗のはずなのに、その美しいアーモンド型の目に頼斗が映ることはない。



「梅本……」



すぐ隣に椅子を寄せて座っていた希美の頬に、頼斗がそっと手を添える。



「えっ……」



まるで恋人に触れるかのような頼斗の優しい手つきに、希美は金縛りにでもあったかのように動けなくなった。



「彼氏と別れて、俺と付き合う気はない?」



控えめに聞いてきた頼斗の声は、2人きりしかいないこの教室では、やけに大きくはっきりと希美の耳に届いた。

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