第37話

その直後、



「梅本さん、これ回ってきたよ」



後ろの席の女子が、小さく折りたたんだメモ用紙をこっそりと手渡してきた。



「?」



開くとそこには、



『桐生姉弟と仲がいいからって調子に乗んなよ』



差出人の名前は書かれていなかったが、そんなメッセージが書かれていて――



「!」



このクラスのイジメのターゲットになってしまったのだと悟った。



泣きそうな表情をした希美を、



「……」



メモの内容までは分からないが、その様子に気付いていた頼斗は、心配そうに横目で窺っていた。



「梅本、学級委員長やってくれるかー?」



担任のその声に、



「あ……はい」



断れなくて、つい頷いてしまった。



すぐに、黒板の『学級委員長』の文字の下に『梅本』と書き込まれる。



(――どうしよう……)



悲しそうに俯く希美に、



「……」



隣の席の頼斗は黙ったまま焦っていた。



(おいおい……これってイジメじゃねぇの!? 担任、ダルそうにしてねぇで気付けよ!!)



そう思って担任を睨みつけたのだが、



「じゃあ次は副委員長を誰か――」



頼斗の視線など気にせずに話を進める。



(あー! もう!!)



苛立った頼斗は、



「先生!」



怒りに任せて勢いよく挙手した。



「何だ? 桐生」



担任が、やっとこちらを見た。



「俺が委員長やります。去年も経験してるので」



昨年は、担任の提案したジャンケンに負けて仕方なく引き受けたのだが。

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