第38話

頼斗は、驚いた表情で自分を見つめる希美を見る。



「梅本、一緒にやろうぜ!」



そして、ニカッと微笑んでみせた。



その笑顔に、



「えっ……うん」



希美は思わず見惚れてしまったが、小さく頷いた。



「じゃあ、委員長が桐生で、副委員長が梅本で決定なー」



担任が黒板を書き直そうとして、



「待って! 桐生君が委員長やるなら、私が副委員長やりたい!」



ギャルが、慌てて挙手した。



「えっ、待ちなさいよ! 私がやるわ!」



他の女子たちも、次々と挙手し始め――



「そんなにやりたいってヤツがいっぱいいるなら、俺と梅本は降りて譲るけど?」



頼斗の恐ろしく低い声に、キャーキャーと騒がしかった教室が、一瞬で静まり返った。



「人に押し付けておいて、今更何言ってんの?」



普段愛想のいい頼斗にしては珍しく冷徹な眼差しに、クラス中の女子たちは黙ったまま俯いた。



「で? 俺らは降りていいの? 女子同士で仲良く引き受けてくれるの?」



頼斗の質問に答えられる者など誰一人としておらず――



「もういいよ、桐生君。一緒にやろう」



きっと自分のために怒ってくれたのだと感じた希美は、隣の頼斗へと笑顔を向けた。



「ん。じゃあ、それで」



頼斗が満足そうに頷いたので、担任は黒板に恐る恐る2人の名前を書き出した。

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