第26話
「桐生君! 昨日の子と別れて今はフリーって、本当!?」
「桐生君! 今は誰とも付き合ってないの!?」
「桐生君! 今彼女いないの!?」
「ねぇ、桐生君!」
「桐生君ってば!」
「桐生君!」
色んな女子たち囲まれ、
「……桐生って苗字、辞めたい」
頼斗は俯いて右手の指先を眉間に当てた。
今現在は昼休みであるのだが、頼斗の周りには女子で出来た人集りが出来ていた。
その様子を、
「えげつない……」
「桐生君、可哀想……」
少し離れた所から姫花と希美が眺めていた。
余りの女子の多さに、希美も自分の席から追いやられてしまったのだが、それに同情したクラスの男子が、昼休みの間だけ席を貸すと申し出てくれた。
そのお陰で、こうして姫花と2人して無事に昼食が取れているわけだが。
「今度は私と付き合ってよ!」
「ううん、私と!」
「いいえ、私よ!」
頼斗の気持ちを完全無視した状態で、女子たちの醜い争いが始まった。
「……これ、桐生君に選ぶ権利ってないの?」
希美が姫花に訊ね、
「あいつの日頃の行いというか……そういうモットーだから、自業自得でしょ」
姫花は同情の余地なし、と首を横に振った。
姫花の言葉に、
「桐生君のモットー?」
希美はことりと首を傾げた。
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