第25話

「……彼氏と、順調なんだ?」



「……うん」



明らかに嘘だと分かるその表情に、



「……っ」



嘘をついてまで頼斗を拒絶する希美に、何故だか分からないが胸が痛んだ。



「……そんなに彼女が欲しいなら、大きい声で今フリーだって言えば? 桐生君なら、すぐに皆喜んで挙手するよ」



希美の言葉に、



「そうだな……でも――」



頼斗は頷いたが、



「俺が今フリーなのは、俺と梅本だけの秘密な」



悪戯っぽく微笑み、右手の人差し指を唇に当てた。



その頼斗の仕草に、



「!」



希美は一瞬ドキッとしたが、



「私が今、大声で皆に発表してあげよっか?」



その感情を隠すように、意地悪くニヤリと笑った。



「あっ……面倒なことになるからそれだけはやめて!」



頼斗は慌てて懇願した。



両手を合わせて拝むような体勢の頼斗に、



「ふふっ……分かった、言わない」



希美は思わず噴き出した。



そんな希美の笑顔に、



「……!」



頼斗はドキッとしたが、



(……あれ? 俺、今なんで……)



その理由は、この時の頼斗にはまだ分からなかった。

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