梅本 希美

第19話

頼斗が帰宅すると、



「あ、おかえりー」



リビングのソファーで、姫花がくつろいでいた。



「……あれ?」



姫花の顔を見て、思い出す。



「今日の放課後は、梅本と買い物に出かけてたんじゃねーの?」



そのせいで、唯が自分で淹れたお茶を寂しそうに飲んでいたのに。



「あー、そうなんだけどね」



姫花は少し困った顔をしてみせた。



「梅ちゃんの彼から呼び出しがあって、途中で切り上げてきちゃったんだよね」



梅ちゃんの彼氏って束縛酷いらしいから、と姫花は小声で付け加えた。



「梅本の彼氏って、結構年上の人?」



頼斗が聞くと、



「うん、塾の先生なんだって」



姫花がさらりと答えた。



「中学の時に通ってた塾で出会って、その時に先生から告白されたんだって」



「……」



何か、危ない香りがプンプンする。



「それ、梅本の親は何も言わねぇの?」



普通の親なら、成人した塾講師が中学生の娘に迫ったりなどすれば、怒り狂って大反対するはずだ。



「梅ちゃん、今は親と一緒に住んでないから」



「……え……」



頼斗は思わず固まり、姫花はハッと我に返った。



「詳しいことは私の口からは言えないけど……あの子、アパートで一人暮らししてるの。だから、干渉してくる親もいないよ」



「……」



「そんな環境だから、梅ちゃんのことを気にかけてくれる大人が傍にいるのは、私としては安心なんだけど」



だから梅ちゃんの彼のことを悪く言わないでね、と姫花は付け加えた。

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