第20話

頼斗は姫花の隣に腰を下ろすと、



「姫花は、梅本の彼氏と会ったことあんの?」



希美の隣にいた男に感じた違和感が拭えなくて、そう訊ねた。



「そういえば……ない、かも」



姫花は顎に手を当てて考える素振りをしてから答えた。



「会わせてくれないんだよね」



寂しそうに笑う姫花を見て、頼斗はふと思う。



希美はもしかすると、姫花と彼氏を会わせた時に、彼氏が姫花に見惚れてしまうのが怖いのでないかと。



本人にそんな気はなくても、自分たち姉弟には、人から正常な判断力を奪ってしまう節があるから。



そんなことをぼんやりと考えていると、



「頼斗はもしかして、梅ちゃんの彼氏見たの?」



姫花の声で、頼斗はハッと我に返る。



「あぁ……さっき、それっぽい人を」



「どんな人だった?」



きっと姫花は興味本位で訊いているだけなのだろう。



「……普通の人」



だから、頼斗が感じた違和感を、姫花に説明することが出来なかった。



姫花に伝えたところで、何がどうなるというわけでもなさそうだから。



「普通? 他にはないの?」



姫花は呆れた顔を頼斗に向けた。



「うん。ない」

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