第13話

「うわっ、きったねーな!」



頼斗は後ろに身を引く。



「げほっ……お、前が、変な……こと言うからっ、ごほっ……だろ!」



唯は咳き込みながら、頼斗を思い切り睨みつけた。



「ちょっと聞いただけじゃねーか」



頼斗はテーブルの上のティッシュを、ボックスごと唯へと手渡した。



唯はそのティッシュで、自分が汚した所を拭いていく。



「……ごほっ、げほっ……」



その間もずっと咳き込んでいて、まぁまぁ苦しそうだ。



頼斗はとりあえず、唯が落ち着くのを大人しく待った。



「……で? いきなりどうしたんだよ?」



しばらくしてからようやく落ち着いた唯が、頼斗をじろりと睨む。



「いや……人を好きになるってどんな感じなのかなって」



ただの素朴な疑問だったのだが、こんなこと、相当親しくないと聞けないと思ったので唯を選んだのだが。



頼斗にとって、唯はただの幼なじみではない。



兄のように慕ってもいるが、一番の親友だと思っている。



「頼斗がそんなこと考えるなんて、珍しいな」



唯は驚いたように頼斗を見た。



「唯が初めて好きって気持ちを自覚した時って、どんな感じだった?」



その瞬間に、一番興味がある。



頼斗は、まだ一度も経験したことがないから。

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