第12話

「ほら、唯も早く!」



頼斗はもう1つのコントローラーを唯に差し出したが、



「いや、俺は今日は見てるだけにする」



唯が苦笑しながら首を横に振った。



「どうせ頼斗には絶対に勝てないから」



言いながら、ベッドによいしょと腰かけた。



「お前っ……闘いもしないうちから負けを認めるのか!」



頼斗は唯を挑発しようとしたが、



「うん、認める認める」



頼斗よりも遥かに大人な態度を見せた唯は、自分の淹れたお茶をずずずっとすすった。



「……姫花の淹れてくれたお茶が飲みたいな」



独り言のようにぼそりと呟いた唯は、こうして離れている間も姫花を想っている。



「……」



別に姉との惚気のろけ話など聞きたくはないが、そういう唯の感情は、頼斗にとっては羨ましいもので。



「……なぁ、唯」



頼斗は、コントローラーを床に置き、唯の方へと振り返った。



テレビの前で床に座っている頼斗は、自然と唯を見上げる姿勢になる。



「ん?」



「好きって、どんな感じ?」



頼斗の唐突な質問に、



「ぶっ……!?」



お茶を飲んでいた唯は、盛大に噴き出した。

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