第7話

「ん? 頼斗のその左のほっぺ、どうしたの?」



姫花が、頼斗の頬の腫れに気が付いた。



「あぁ……さっき、前の彼女にフラれた時に打たれて」



頼斗が何でもないことのように答え、



「はぁ!? またなの!?」



姫花は呆れ返った。



「今時、何をどうしたら、そんな少女漫画みたいな展開になるの?」



「……」



それは頼斗だって教えて欲しいが。



「あと、“前の”って何? しかも、“さっき”っていつ?」



「学校着いてすぐに呼び出されてフラれて、その現場を見てた子にすぐに告白されたから、今はその子と付き合ってる」



頼斗がそんなことをスラスラと述べて、



「……ごめん。双子だけど理解出来ないし、したくもない。なんでそんなに女にだらしがないの?」



姫花は険しい顔をして頭を抱えた。



「失礼な。俺は1人ずつとしか付き合ってないぞ」



告白された時に、頼斗に既に彼女がいる場合は、その旨を伝えてきちんと断っている。



二股や浮気なんて、したことがない。



だからこそ、彼女たちは目を光らせて待っているのだ。



頼斗が彼女にフラれるその瞬間を。



今朝の彼女だってその時をずっと待っていて、偶然校舎の窓から見えて、慌てて中庭まで出てきたのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る