第6話

頼斗たちの母だけを、一途に愛している。



いつか、自分もそんな風に誰かを愛してみたいという願望は、実は頼斗にもある。



だけど、そんな相手はなかなか現れなくて。



だから、色んな女の子と付き合ってみて、そんな相手に出会えないかと模索しているところなのだ。



幸いなことに、常に彼女がいると言っても過言ではないくらい、容姿には恵まれている。



これを利用しない手はないと思っている。



それなのに、この隣の席の希美は何故だか姫花を一筋に推していて、頼斗になびく気配が全くない。



「あっ……ごめん、そういう意味じゃなくて」



希美は何かに気付いたのか、慌てて両手を前に突き出してブンブンと振った。



その振動で、希美の赤いフレームの眼鏡が少しだけずり落ちた。



「桐生君はカッコイイと思うよ。でも、私は姫ちゃんの顔がタイプというか」



希美が、眼鏡の位置を直しながらそう言った。



「……」



誰もそんなことは聞いていないが。



だが、タイプじゃないなんて初めて言われた。



「やっぱり、梅本って変わってて面白いな」



言うことがその辺の女子とは全く違っていて、頼斗には新鮮に感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る