第5話
「姫花、そろそろ自分の教室に戻れよ」
希美の隣の席に座っていた頼斗が、すぐ近くにいた姫花へと声をかけた。
姫花のクラスは、隣の2組だ。
「だって、梅ちゃん1人に出来ないし……」
姫花は困った顔をした。
希美が、姫花の制服の袖を掴んで離さないのだ。
「梅本。俺が隣の席なんだから、寂しくないだろ?」
頼斗は、希美とは姫花を通じてそこそこ仲がいいつもりだった。
頼斗の台詞に、
「いいなぁ……」
「私も、桐生君にあんなこと言われた〜い」
他の女子たちがキャーキャーと騒いだ。
それが、普通の女子の反応のはずなのだが、
「……」
希美は何故だかムスッとした。
「姫ちゃんがいい」
「……」
頼斗が付き合ってもいない女子から、突き放すような態度を取られたのは、希美が初めてだった。
「姫ちゃんの方が、桐生君とは比べ物にならないくらい綺麗な顔してるもん」
「……え? 顔の話!?」
今の話とどう関係あるのかと、頼斗は面食らった。
第一、誰かと顔を比べられて負けたことなど、若い頃の父親くらいしかなかったのに。
頼斗にとって、父は目標だ。
父は容姿に恵まれ、若い頃はモデル業もこなしていて、現在はこの街で一番大きな総合病院の眼科医をしている。
今も昔も、女性にはかなりモテるのに――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます