第7話
「イルナ殿どうか私と結婚してください」
ディオスが反イルナ派の炙り出しに躍起になっているころ事件が起こった。
その折隣国の第3王子のガイルがイルナに一目惚れをしたのだ。
「申し訳ございません。私は王太子ディオス様の婚約者なのです。そのお話はお受けできません」
ガイルは女好きする端正な顔立ちにスポーツを好むせいか逞しい体つき。かつ剣技も隣国随一と噂だった。
「ですがイルナ様はディオス様と一緒にいらっしゃるところを見たことがありません。本当に婚約者なのですか?」
「はい…今は、私のために邁進してくださっているのです」
頬を染めてそういうとガイルはむうと難しい顔になった。
彼は女の子に振られたのは生まれて初めての経験なのでそれが逆に新鮮でますますイルナにのめり込んだ。
毎日のように愛を囁き、プレゼントも山のように贈った。
だがいずれも丁重にお断りされ、ガイルの部屋は返された贈り物で溢れかえっていた。
「ガイル様。いい加減諦めたらいかがですか」
付き人のラナが言うとガイルはおかしそうに笑う。
「だからいいんだよ。たとえ外交問題になっても俺はイルナ嬢をものにして見せる」
ラナはため息をついてたまった贈り物を孤児院に寄付させた。「イルナ嬢に変な虫がついているという報告を受けました」
「なんだと!」
今日も今日とて反イルナ派の人間を炙り出し、処分しているところでアベルが衝撃の報告をしてきた。
「一体誰が?」
「隣国の第三王位のガイル様です」
俺は心の中で舌打ちした。隣国とは有効な関係を築いているのにそれを崩すわけにはいかない。だからと言ってイルナを差し出すつもりもない。
「しばらく業務を離れても大丈夫か?」
ラナは即座に答える。
「1週間ほどでしたら」
アベルは優秀な補佐だ。1週間という期間を作り出すためにどれだけ徹夜を繰り返すつもりなのだろう。
だが今はイルナだ。今は落ち着いて優しい令嬢だが、何がきっかけで悪役令嬢に変貌するともわからない。
それに俺自身イルナが他の男に言い寄られるのがいい気分ではない。
翌朝俺はイルナの家の前に来ていた。馬車を待たせて俺はイルナの屋敷に入って行った。
「ディオス様!どうされたんですか?」
頬を赤く染めて嬉しそうに微笑むイルナが俺に駆け寄ってきた。
(可愛いな)
そう思っているとイルナは俺の目の下をそっとなぞる。
「クマができています。激務だったのでしょう?お休みになられたほうが」
「いや。せっかくできた1種間の休みだ。お前と共に過ごしたい」
r嬉しいですL。では一緒に学校に行けるのですね」
「ああ。もちろんだ。さあ行くぞ」
俺はイルナを連れて馬車に乗り込むと学校へと向かった。
ふと思い出したことがある。
確か隣国の第三王子は主人公マリアと恋に落ちるはずの攻略対象だったはずだ。
少し思考を整理することにした。
本来の悪役令嬢だったイルナは、幼い頃から妃教育を受けており、高慢で他人を使うことに何の躊躇もない嫌な女。
俺ことディオスに近付くマリアに対しては容赦がなかった。
それを憐れんだディオス、アベル、ガイル、ラナがマリアを守り、恋に発展んする。特にディオスルートでは怒り狂ったイルナがマリアを殺そうとして逆に斬り殺されるという悲惨な結末が待っている。
「俺がイルナを斬り殺す!?ありえない」
だが実際には男達だけでなくマリアまでイルナが攻略対象に恋をされている。ラナはわからないが、アベルはイルナに密かに恋心を抱いていることくらいわかる。
(どういうことだ?俺が色々と改変したせいか、世界が変わってしまったのか)
そうなるとイルナが俺以外との恋愛をする可能性もある。
(そんなこと絶対にさせない)
俺はそう決意しながらイルナと一緒に教室に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます