第5話
ディオスは苛立っていた。
今回の事件をきっかけに己の立場を守るために反イルナ派が結託して公爵令嬢のアリエナ嬢を候補にと進言してきたのだ。
「俺の愛する人はイルナだけだ。他の人間に興味はない」
確かアリエナはイルナの悪友としてヒロインを一緒にいじめていたキャラクターだったはずだ。
だが今。悪役令嬢になる予定だったイルナは心やさしい少女に成長している。もしアリエナ嬢が邪悪な人間ならイルナが悪の道に落ちてしまう危険がった。
(この2人は接触させたくないな)
ディオスはそう決意するとアリエナ嬢をリリアの通う名門校から別の名門校に移した。
これだけ徹底すれば大丈夫だとたかを括っていつものイルナとのお茶の時間にイルナは驚くことを言った。
「そういえば今日街で倒れている人を介抱したのですが、転校したアリエア様だったので驚いたのですよ。お話ししたら気さくな方で私たち早速仲良くなって、文通を始めたのです」
(ゲームの校正力の力か、とうとうアリエナとイルナは出会ってしまった。この後どうば挽回すれば)
必死に考えたがいい考えは浮かばなかった。
幼い頃出会ってからイルナは悪役令嬢の兆候を見せなかったが。いい案が浮かばないまま、運命の日がやってくる。
主人公であるマリア・テトラが学園に入学してくるのだ。
(俺はイルナ一筋だが、万が一、マリアに恋をしたらどうしよう)
その不安は杞憂に終わる。
王太子である俺の元に挨拶にきたマリアはあまりに普通の美少女で特段気を引く何かを持っているわけではなかったからだ。そばに控えていたイルナはマリアのことを気に入ったようで、お友達になりましょうと手を握り合っていた。
謁見が終わると俺はふうとため息をつく。
「お疲れですか?最近激務続きでしたものね」
イルナは俺の体調を気遣ってくれる。こんな優しい子が悪役令嬢になるなんて考えられない。ゲームの中では一体
どうなっているんだろう。妹がやってるのをチラ見したがイルナは高圧的でもっと嫌味な喋り方をするキャラクターだったはずだ。目の前にいる彼女とは似ても似つかない。
****
マリアは聖魔法が幼い頃から使えていた。
この世界では魔法を使えるのは貴族か聖職者のみ。
マリアは異端児として生まれてすぐに教会に引きとらられて周りに愛されて過ごしてきた。
だがマリアの同年の者はマリアの異端を恐れて近づかないため、心配した神父がマリアを学校に通わせることにしたのだ。同じ力を持つ者同士、きっと仲間ができるだろうという考えだった。
そしてその考えは成功する。イルナの親友になれたからだ。マリアとイルナは日に日に仲良くなって親友と呼べる関係になっていた。
ある日、マリアが真剣な顔をしてイルナに相談事を持ちかけた。
「あのね、ディオス様付きのアベル様って好きな方いらっしゃるのかしら?」
「あら、マリアはアベルのことが気になるの?彼の生きがいはディオスの世話を焼くことよ。付き合うのなら相当の覚悟が必要だと思うわ。何があってもアベルはディオスを優先するから」
「それでもいいの。お願いイルナ。協力して」
「ふふ。もちろんよ。恋。叶うといいわね」
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