第4話

(どうしてお姉さまばかりがいい目を見るの)


ティナは今朝も仲睦まじい2人を見て発狂しそうなほど怒りが湧いてきた。

どうにかしてお姉さまに一泡吹かせてやれないかと画策していると、子分の一人がそっとティナに耳打ちする。


「貞操を奪ってしまうのはいかがでしょう。ティナ様が廃校社にイルナ様を呼び出していただけたらあとは私たちがイルナ様の貞操をいただきます」


(それは最高ね、自分よりだいぶ格下に犯されたらきっとお姉さまは婚約解消、それどころか追放になるかもしれない。)

 

「この話は私は聞かなかったことにするわ。あなたが勝手にやったことよ」


ティナが言うと子分は頷いた。


「これでお姉さまはおしまい」


ティナは高笑いしてスキップしながら馬車へと向かった


「イルナ様」


イルナが一人で校内を歩いていると一人の少年が声をかけてきた。


「実はティナ様がお話があるということで、一緒に来てほしいのですが」


「ティナが?」


直感できにこれは罠だと思った。ティナは前々から私を害する計画を練っていたのでついに実行に移すことにしたのだろう。


だがここで逃げ出してはディオスの許婚としての立場が悪くなる。ティナを呼びに来たのが私がディオスとの婚約反対派の筆頭、ジル・ハルバートの息子、ジオルだったからだ。


「わかりました」


イルナはジオルの後について歩きはじめた。

ジオルに連れてこられたのは天蓋付きのベッドが置かれた休憩室だった。


「ここに何が?ティナは?」


イルナは演技しながら呪文の詠唱を始めていた。

おそらくここでイルナを犯してイルナを婚約者から引き摺り落とすつもりらしい。

だがそこで大人しく従うわけではない。


案の定、柄の悪い男子生徒が数人にじりよってきた。


「ふう。なんの捻りもないのね」


そういうと呪文の詠唱が終わり、強い光に日部屋が包まれる。


光が収まるとそこにいた全員が倒れていた。ただ一人、ジオルを除いて。


「ジオル・ハルバート。あなたを私に害意ありということで逮捕します」


そこにアベルが入ってきた。


「いいタイミングね。さすがアベルだわ」


「いえ、本当は何か起こる前に全員ボコるつもりだったんですが。これで1人ディオス様の政敵が減りました。

ありがとうございます」

アベルが手早く連れてきた衛兵に指示を飛ばして反対派を押さえつけている間、 

イルナはベッドに腰掛けてその様子を見ていた。


遅れて駆けつけたディオスはイルナを抱きしめた。


「無事でよかった。もう二度とこんなことは許さないからな、自らを囮に使うなど、絶対に許さない」


イルナは今まで気丈に振る舞っていたが、ティオスが来てくれたことで緊張が和らいだのだろう。ほろりと涙を流してディオスに抱かれて安心した表情を見せた。


今回の首謀者であるティナは国外にある厳しいことで有名な名家に行儀見習いという名目で国外追放となった。

まだ反イルナ派は残っているので完全に安心はできないが一番大きな一派を一掃できたのは暁光だった。

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