第3話

それからというもの、イルナの好む本を読み耽り、週に一度はお茶会を開いてイルナを招待した。すると何故かイルナの妹のティナも付いてきてイルナと話していても横から話に入ってくるし、庭園を散歩すると腕に巻きついてきて非常に鬱陶しかった。


「アベル。ティナは一体どういうつもりなのだ?」


「ああ〜それは殿下を狙っているに決まっているじゃないですか。客観的に見るとティナ嬢の方が男好きする体型と顔ですからね。調査させましたが、家でもティナ嬢はイルナ嬢に辛く当たっているよです。ただイルナ嬢はその才でかわして相手をしていないと言うことでした」


確かイルナは両親が亡くなって最初にティナを処刑しているはずだ。

これ以上このままシナリオを進めると罷り間違ってそうならないように今度はティナ嬢の来訪は禁じることを書状に認めてシェラザード家に送った。


一方、イルナはあまり表情を見せない少女だった。

それは妃教育の一端だったのだろうが、ディオスはイルナの笑顔が見たかった。


「そういえば、イルナ様がお読みになっていた冒険譚を読みましたが、海外に旅に出ることがない我らにとってこころ踊る話でしたね」


するとイルナはパッと顔を輝かせて言った。


「そうなんです。船に乗って世界中を旅する、それが私の夢なんです。今世で叶わなければ来世ではきっと私は冒険者になって世界中を旅をするのです」


 普段見せない無邪気な笑顔と言葉に俺は笑みを浮かべた。どんなに教育を受けても中身はまだまだ幼い10歳の子供なのだ。


「あ…失礼足しました。どうか今の言葉はお忘れください」


 ハッとして我に帰ったイルナは控えめにそいうと顔を伏せて耳まで赤くしていた。


「では、今の話は2人だけの秘密にしましょう、その代わり、もし来世で出会えたら一緒に旅をしてくださいますか?」


俺がそう言うとイルナは恥ずかしそうにはにかんだ笑顔でコクリと頷いてくれた。

そうして俺とイルナは仲良く交流を続けたため、良い関係を続けることができていた。

この世界の良家の子女、子息は12になると学校に通い始める。それも婚約者が相手を迎えに行って一緒に馬車で登校するのが暗黙のルールになっていた。


それは例に漏れず俺とイルナも一緒だった。

毎朝顔を見て談笑しながら通学できることが嬉しくて俺は毎日学校を心待ちにしていた。


だが問題が一つ。イルナの妹のティナは年頃の令嬢なのに婚約者がいなかった。答えは単純、性格が悪すぎていつも破談になるのだ。そのため俺と仲睦まじいイルナを相当恨んでいた。


(まずいな、このままいけばティナの断罪は逃れられない)


ティナは学校でも性格が悪く友達がいないが、爵位が上のため、爵位の低い物を子分のように扱っていた。

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