第2話
***
俺には側仕えの少年がいた。年は俺と同い年だが,厳しい訓練を受け、並の大人では敵わないほどの身体能力をもっている。
名前はアベル。黒髪に流し目の男らしい子供だった。
信頼のおける彼にだけは自分が転生者で悪役令嬢のイルナを救おうと考えていることを話していた。
「では本来ディオス様に恋をする予定の令嬢は,全ておれが引き受けます」
アベルはこともなげにそう言うと微笑んだ。
「イルナ様はとても良い令嬢です。どうかあなたの力でお救いください」
おれの戯言を信じてサポートしてくれるアベルを俺は感涙して抱きしめた。
****
庭園での散歩中、イルナは終始頬を赤らめて俺が喋っことに「ええ」「はい」と同意するだけで積極的に話してくれなかった。
(何か悪いことしたかな?このままだと悪役令嬢になって断罪されてしまう)
俺はアベルにそのことを相談するとクスリと笑っていった。
「それはディアス様と二人きりだから緊張していたのですよ。だから今後はなるべくイルナ嬢が打ち解けやすいように彼女の返答しやすい本の話なんていかがですか?」
「なるほど。そうすればイルナもきっと心を開いてくれるな。アベル、イルナの好きな本の情報を集めて俺にもその本を用意してくれ」
「承知しました」
アベルが部屋をさったあと、俺はベッドに横になってイルナのことを思い出していた。金色の美しい絹のような髪。薄いグリーンの瞳。少し笑った時の甘い顔。
俺は一目で彼女に恋をしていた。
(イルナは何がなんでも守ってみせる。絶対に断罪などさせない)
俺は決意も新たに目を閉じた。
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