第94話

姫花は、再びリビングに戻り、



「ちょっと外に出てくるから」



食事中の男2人にそう告げた。



「……唯君か?」



父は一瞬だけ考え込んでからそう訊ね、



「うん」



「なら安心だな」



姫花の返事を聞いて安堵の溜息をついた。



「姫花、これ食わねぇの?」



頼斗は自分の箸で、姫花のハンバーグを指し示した。



(……ママが見たら怒るよ、その箸使い)



姫花はそう言いたいのを堪え、



「食べたいなら、食べれば?」



自分は近くのコンビニでおにぎりでも買って食べよう。



そう考えて、素っ気なく頷いた。



「やった! もーらい!」



嬉しそうに姫花のハンバーグの皿を引き寄せる頼斗を見ていると、何だかイラッとする。



この自己中能天気が校内一のモテ男だというのだから、信じられない。



皆、見る目がないんじゃないか。



とにかく何だか腹立たしいので、姫花は頼斗を睨みつけながらリビングを出た。



このマンションはオートロック式なので、靴箱の上に置いてある姫花の分のキーを取り、それもショートパンツのポケットに入れる。



適当なサンダルを履いて、正面玄関の外まで出て行った。

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