姫花の努力

第92話

「はぁぁぁー」



食卓に着き、目の前の父の顔を見て、姫花はいつもよりも大きな溜息をついた。



「……今日は、いつも以上に感じの悪い溜息だな」



その変化に、父はすぐに気が付いた。



「私が幼児体型なのは、絶対父さんに似たせいだー」



父特製のハンバーグを箸の先でつつきながら、姫花はひたすら文句を垂れる。



今日も母が遅番のために、晩ごはんの当番は父がしていた。



「……何の話だ?」



話が読めずに眉間に皺を寄せる父に、



「貧乳の話だよ」



頼斗が、大きく切り分けたハンバーグを一口で頬張りながら教えた。



「あぁ……」



父は一旦は納得したように頷いてから、



「……何故それが俺に似たと?」



再び眉間に皺を寄せた。



「だってママはある方だけど、父さんペッタンコじゃん!」



「当たり前だ、俺は男なんだから」



また娘が馬鹿な話をしている。



どうしてこの子はこうも変なことばかりを言うのか。



父は痛む頭を両手で抱えた。



そんな、微笑ましい(?)やり取りの最中、



――♪♪♪♪♪♪――



姫花が部屋着として穿いているショートパンツのポケットの中で、スマホが鳴り響いた。



「あれ? 唯?」



液晶画面を確認した姫花は、一旦部屋を出て、自分の部屋へと移動した。

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