第90話
「勿論、努力はする。でも……今度、姫花のことを悪く言ったら、進学せずに就職して、この家を出て行くから」
唯は父親を鋭く睨みつけながら、そう告げた。
「お前、まさか本気であの子に……」
驚く父と、
「待って、唯……あなたに出て行かれたら、私は……」
青ざめる母。
本当に自分たちのことしか考えていない両親に、嫌気が差す。
この環境で、よく自分がマトモでいられるなと自分自身に感心してしまう。
それもこれも全て、姫花の存在のお陰だが。
「高卒で就職なんかしたら、絶対に許さないからな! 絶対に医者か弁護士になれ!」
「……」
唯の人生なのに、何になりたいかすらも、この父は選ばせてくれないらしい。
「……俺は、教師になりたいんだけど」
唯の言葉に、
「あら! 素敵じゃない!」
母は嬉しそうに手を叩いたが、
「馬鹿女は黙っていろ!」
父に怒鳴られ、口を
「お前は教師なんて出来る器じゃないだろう」
「……なれるよう、努力するから」
ずっと何になりたいかも分からずに突き進んできた唯だったが、やっとやりたいことを見つけたのに。
姫花が見つけてくれた唯の長所を、活かせる仕事だと思ったのに。
「いいか? お前が俺の言う通りのことが出来るのなら、お前が誰と付き合おうと俺は何も言わない」
「……」
父が交換条件を出す時は、洗脳しようとしている時だ。
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