第88話
唯自身も、それまではこの父と同じように他人を見下して生きていた。
小学校に入学して授業が開始された途端、唯の頭の良さは群を抜いて目立ち始めた。
それを両親はとても喜んだし、
「お前は人とは違う、天才だ」
と言われ、唯自身もそう信じ、他人は全員馬鹿なのだと見下して過ごしていた。
今思うと、完全に洗脳されていた。
こんなに幼い状態で既に歪みきっていた唯の人格は、当然周囲の大人たちには良いように見られるはずもなく……
唯が、姫花と頼斗の桐生姉弟と一緒に遊んでいた時に、その扱いの差に気が付いた。
目立つ容姿で人懐っこい性格の双子は、近所でも評判で皆から可愛がられていて。
姿を見かける度に、お菓子やジュースをもらっていた。
感じが悪いと有名な唯には、そんなものは誰もくれないし、声もかけないのに。
だからなのか、この頃の唯は姫花と頼斗のことが嫌いだった。
近所には同じ年頃の友達が他にいなかったので、一応付き合い程度に遊んだりはしていたが。
そんなある日、近所のおばさんが、公園で唯と一緒に遊んでいた姫花と頼斗に、大手の某有名ドーナツ店の紙袋を手渡したことがあった。
中には花のような形の、タピオカでんぷんを使用したもちもち食感のドーナツが2つ。
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