第83話
「ずっと前から、姫花とこうしたかった」
「唯……」
「だから、ごめん……そんなに簡単に離してあげられない」
苦しいくらいに強く抱き締められているのに、全く不快ではない。
唯の体から伝わってくる体温も、震えすらも心地良いと思ってしまう。
「……姫花のことが好きすぎて、どうすればいいのか分からない」
唯の苦しそうな声に、姫花も苦しくなってくる。
姫花は、両腕を唯の背中に回して、唯をぎゅっと抱き締め返した。
「!」
姫花が自分を受け入れてくれたのだと分かって嬉しくなり、唯は更に腕に力を込める。
「ゆ、唯っ……痛いよ!」
姫花は、ギブアップの意思を表示するために唯の背中をバシバシと叩いた。
「あっ、ごめん!!」
唯は、ここでやっと姫花を離した。
「ごめん……大丈夫か?」
「もう! 馬鹿力なんだから!」
姫花にプイッと顔を背けられてしまった。
「ごめん……」
唯は、シュンと項垂れた。
姫花を怖がらせたくないと思っていたはずなのに、自分の行動が信じられなかった。
あれだけ強く抱き締めたのに。
まだまだ全然足りないと思ってしまう。
このままでは、自分が次に姫花に何をしでかしてしまうのか――全く分からなくて、唯は自分が怖くなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます