第82話

そんな姫花を見て、



「……」



唯の胸はキュンとなる。



「……姫花」



突然、真剣な声で呼ぶ唯を、



「え……何?」



姫花が不安そうに見上げた。



「……抱き締めていい?」



「えっ……ここ、学校……」



いいか悪いかではなく、場所を気にし始めた姫花に、唯はますますキュンとした。



姫花の腕を掴んで引き、教室に連れ込むと、扉を閉める。



2人きりの教室で、



「姫花……」



唯は、姫花を思い切り抱き締めた。



「ゆっ、唯……!?」



姫花は緊張で体を強ばらせた。



……が、



「……あ……」



密着した唯の体が、小刻みに震えていることに気付く。



「……ごめん、俺……今、凄く緊張してて……」



そう言う声も、少し震えていて。



思わず唯の顔を見上げると、



「……っ」



真っ赤に染まった顔を、背けられた。



「……格好悪いよな、俺」



「……あ、あの、唯……」



恥ずかしすぎて限界を感じた姫花は、唯から離れようとして、



「でも、まだ離したくない」



唯が更に力を込めて姫花を抱き締め、それを阻んだ。

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