第80話

「成長途中、ねぇ……」



安斎は姫花をじろじろと見て、



「そうよねぇ……まだ1年生だものねぇ」



意地悪そうにニヤリと笑った。



「私は今のあなたくらいの頃にはもうかなり成長してたけど……これからどうなるのか、楽しみね」



「……う……」



姫花は思わず項垂れた。



「何か興ざめしちゃったわね」



安斎はふぅ、と溜息をつく。



「今日のところはもう許してあげるけど……私は諦めないからね」



唯の腕に軽く手を触れ、熱の籠った視線で唯の目を覗き込んだ。



その様子は、匂い立つ程の色気を感じられて、



「……」



姫花はますます劣等感にさいなまれた。



大人の色気も、姫花にはないものだ。



そんな姫花の表情に満足した安斎は、



「じゃあね、市川君」



背伸びをして、唯の頬に軽く口付けた。



「なっ……!?」



また不快そうに顔を顰める唯と、



「……っ!!」



ショックで固まる姫花の表情を見て、



「ふふふっ」



安斎は嬉しそうに笑いながら、その場を後にした。

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