第79話

「……アンタなら、丁度いいと思っただけよ」



安斎がぽつりと漏らした言葉に、



「?」



唯は怪訝そうな顔をする。



「めちゃくちゃ頭も良くて将来有望だし、よく見たらそこそこ顔もいいし……今朝のアレだって、ギャップがあったし」



「……」



“将来有望”の単語を聞いた瞬間、唯はかなり不快そうに眉根を寄せた。



それに気付いた姫花は、



「……」



心配そうに唯の顔を見つめていた。



――将来有望という言葉は、唯が最も嫌う言葉だから。



「地味で大人しいから、ちょっと言い寄ればイケるかなと思っただけよ」



安斎は唯の表情の変化には気付かず、話を続ける。



「……でも、チョロそうだと思ってたものが簡単に手に入らないと思うと、ますます欲しくなるわ」



安斎は、不敵にニヤリと笑った。



「こんな幼児体型に、負けたりしないから」



安斎に指を差された姫花は、



「なっ……!?」



気にしていることを言われ、ムッとした。



「まっ……まだ私は成長途中なので!」



咄嗟に出てきた言葉に、



「……あっ……」



自分で恥ずかしくなった。



「……」



唯もぽかんと姫花を見つめていて、それに気付いてますます恥ずかしくなる。

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