第76話
姫花は、非常にそわそわしながら唯が教室まで迎えに来てくれるのを待っていたのだが――
「……」
なかなか来てくれず、いつかの時みたいに、1人ぽつんと放課後の教室に取り残されていた。
梅本は唯に一言挨拶をしたがっていたのだが、部活があるのでもう既に行ってしまった。
唯が朝からクラスメイトと喧嘩をしたらしいという噂は、もう既に聞いて知っている。
唯は普段は大人しいのに、大きな喧嘩をしてしまうことが、ごく稀にある。
しかも、その喧嘩の原因は姫花が絡んでいる場合が殆ど。
危ないことはやめて欲しいのに、その思いはなかなか唯には届いてくれないようだ。
「……様子見に行こうかな」
姫花はそう決意すると、自分の鞄を手に取り、教室を後にした。
階段を降りて、唯の教室を目指して廊下を突き進み――
その廊下の途中で、唯を発見した。
その唯の腕に自身の腕を絡めてすり寄っている女子の姿があることにも気付く。
以前、唯に言い寄っていた先輩だ。
だが、前回と比べ、随分と雰囲気が違う。
清楚系だったはずなのに、今は制服のシャツの胸元をはだけさせ、胸の谷間を強調していた。
そんな状態で唯にすり寄れば、結構見えてしまっているはず……
姫花は、自分の胸元を見下ろした。
お世辞にも豊かとは言えない寂しい胸元に、
「……」
ただただ悲しくなっただけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます