第71話

「佐藤……何か、恨み込めてない?」



「お前がそう感じたのなら、気のせいではない!」



「おい!?」



唯は慌てて佐藤の顔を見上げた。



佐藤は唯を叩く手を止めない。



「俺だって……俺だってなぁ……姫花ちゃんのこと狙ってたのに!!」



「ちょっ……マジで痛い!」



耐え切れなくなった唯は、慌てて椅子から立ち上がる。



その瞬間、後ろに立っていた誰かにぶつかり、



「……っと、悪い」




謝りながら振り返った。



「……お前、本気で桐生 姫花と付き合えてると思ってんの?」



このクラスのカーストでは間違いなく最高位に位置している相庭あいばが、唯を睨んでいた。



「……」



相手が相庭だと認識した瞬間、唯は黙った。



相庭がクラスのナンバーワンなら、唯は最底辺に位置しているから。



「お前みたいな地味で勉強しか脳のねぇヤツが、桐生 姫花に相手にされるわけねぇだろ!」



「……」



本当は言い返したいことなど山ほどあるが、唯は黙ったままだ。



「まぁ、あの女もビッチで有名だし、たまにはガリ勉君の味見をしてみたくなっただけなんだろうけどな」



「!」



姫花を悪く言われ、唯は反射的に相庭を睨みつけた。



「あ? 何、俺のこと睨んでんだ?」



「俺のことは何を言ってもいいけど、姫花をけなすようなことだけは許さない」

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