第68話

電車を降りて駅を出て、学校へ向かうバス停へと歩き出した時、姫花は唯の隣から黙ったままスッと離れた。



「えっ? 姫花?」



突然のことに戸惑う唯を置いて、姫花はさっさと前へ突き進む。



そして、



「ねぇ」



先程、電車内でヒソヒソ話をしていた男子生徒2人組に声をかけた。



「えっ!? 桐生さん!?」



「うわっ、近くで見ると余計にすげー美人……」



姫花の存在に気付いた瞬間、嬉しそうな声を出した2人に、



「私にも、相手を選ぶ権利くらいあるから」



不機嫌極まりない声と表情で、2人に告げた。



「あなたたちみたいな程度の低い男が、唯のこと悪く言ってんじゃねーよ」



突然悪くなった姫花の口調に、男2人は目を点にした。



姫花は普段は母に厳しくしつけられているので、口調や振る舞いには十分に気を遣っている。



が、機嫌が悪くなると、態度や口調も一気に悪くなる。



言い寄ってくる男を少しでも遠ざけたいという意思も勿論あるが、殆どが無意識のことの方が多い。



「人のこと悪く言ってる暇があったら、少しはそのダサい見てくれを何とかしろっつーの」



そこまでを言うと、



「ふんっ!」



男2人に対し、ぷいっとそっぽを向いた。



「「……」」



ショックで立ち止まった男たちを放置し、



「唯ー!」



言いたいことを言ってスッキリした姫花が、唯の隣に戻ってきた。

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