第67話

姫花が唯との付き合いをスタートさせてから初めての朝を迎えた。



いつものようにマンションの正面玄関を出ると、



「おはよ、姫花」



甘く優しい笑顔を浮かべた唯が待っていた。



「あ……お、おはよう、唯」



昨日までとは明らかに種類の違う唯の挨拶に、姫花の頬は自然と赤く染まる。



「……本当、可愛いなぁ」



唯の顔も自然と緩んでニヤけてしまう。



「……俺は朝から何を見せつけられているんだろう?」



ただ1人、頼斗だけはその光景を少し離れたところから見ていた。



「……明日から登下校の時間ずらそうかなぁ」



そんなことを、独りちる。



手を繋いだりはしていないものの、2人の空気はどこからどう見ても恋人同士のそれにしか見えない。



同じ電車に乗り合わせた同じ学校の生徒たちも、姫花と唯の異変に気付いてヒソヒソ話をしているくらいだ。



「えっ? あの2人……」



「うわっ、マジで!? 俺、桐生さん本気で狙ってたのに」



「でも、あの程度の男が相手なら、すぐに奪い取れるんじゃね?」



露骨に聞こえてきた話し声に、



「……」



唯は少なからず落ち込んだ。



姫花と付き合えたからと言って、それだけで安心していてはいけない。



急に元気のなくなった唯を見て、



「……」



姫花は眉間に皺を寄せた。

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