第66話

「……姫花?」



何も答えてくれない姫花に、不安になった唯は姫花の目を覗き込む。



「あっ……」



はっと我に返った姫花は、



「あのっ……ふつつか者ですが……」



そんな言葉を口走り、



「あっ、違う! えっと……」



あたふたし始めた。



そんな姫花を初めて見た唯は、



「……可愛すぎかよ」



自分の意思に反して勝手にニヤけてしまう口元を、右手の甲で押さえて隠す。



「わ、笑わないでよ……」



思わず泣きそうな声を出す姫花の頭を、



「笑ってない……ちょっとニヤけただけ」



唯が優しく撫でた。



「これからよろしくな、姫花」



「うん……私の方こそ、よろしくね、唯」



恥ずかしそうにはにかんで答えてくれた姫花が、唯にはあまりにも可愛く見えて、



「はぁ……可愛い……姫花、本当に可愛い」



思わず悶絶した。



「恥ずかしいからやめてよ、唯!」



「!」



姫花の“やめて”に一瞬だけ反応した唯だったが、



「やっぱり可愛い……」



すぐにまた悶絶し始めた。



「約束と違う!!」



姫花は、また泣きそうな声で叫んだ。

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