第65話

そんな姫花を見て、



(なるほど……やっと姫花の気持ちが分かった)



唯の中の疑問が、ストンと腑に落ちた。



「姫花の嫌がるようなことは、絶対にしない」



唯は、姫花の目を真っ直ぐに見つめた。



「だから、嫌だと感じることがあれば、遠慮せずに教えて欲しい。言ってくれれば、すぐにやめるから……」



唯はそこまでを姫花に伝えると、静かに立ち上がった。



姫花のすぐ隣に移動して、そこで腰を下ろす。



「!」



急に接近してきた唯に、姫花はまた体を強ばらせた。



唯の右手が、姫花の左頬にそっと添えられる。



「……姫花……」



親指で優しく姫花の頬を撫でると、



「……」



それが心地いいのか、姫花の体から力が抜けるのが分かった。



「怖い?」



唯が優しく訊ねると、



「……怖くない」



姫花は意外そうな表情をしながら答えた。



「良かった」



唯はほっと息をつく。



姫花からそっと手を離すと、



「姫花……好きだ。俺と付き合ってくれないか?」



唯は姫花の目を真っ直ぐに見つめた。



いつになく真剣な表情をしている唯の目に、



「……」



姫花は見惚れて言葉を失くした。

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