第63話

もう十分に見慣れたはずの姫花の部屋のローテーブルの前で、



「……」



唯は落ち着きなくそわそわしながら座っていた。



姫花の両親は今日は2人とも仕事に出掛けているらしく、今この家には姫花と唯しかいない。



2人きりで、何を言われるのか。



色々と想像を巡らせるも、全て悪い方へと考えてしまい、勝手に落ち込む。



「はい。お待たせ」



唯の目の前に、この前もここで飲ませてくれたものと同じ種類の紅茶が置かれた。



「ありがとう」



フーフーと息をかけ、一口だけ飲む。



「……うん。美味しい」



緊張のしすぎで味なんて分からなくなるかと思ったが、ちゃんと美味しく感じた。



「……やっぱり、毎日でも飲みたいな」



姫花と離れたくないという意味を込めて言い、ローテーブルの向かいに座っている姫花の方をちらりと見る。



姫花はその意味が分かったのか、



「……え?」



顔を真っ赤に染めていて、唯は驚いて目を見張った。



「……唯がそう望むのなら、毎日でも淹れてあげるよ」



そう答える姫花の目は、涙で少し潤んでいて……



唯のことを好きでいてくれているんじゃないかと、期待してしまいそうになる。

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