唯の憂鬱

第62話

唯が姫花に告白をしてしまってから数日が経ったある日の下校途中で。



唯は気まずさを感じながら、姫花と一緒に駅からの帰り道をとぼとぼと歩いていた。



頼斗は、サッカー部の練習試合に助っ人として参加していて、今日は一緒にはいない。



こんなに気まずい思いをすると分かっていたら、告白なんてしなかったのに。



勢いに任せて先走ってしまった数日前の自分を、激しく呪う。



「……ねぇ、唯?」



姫花に不意に呼びかけられ、少し前を歩いていた唯は、姫花を振り返った。



そうして見えた姫花の表情はとても真剣なもので。



「え……どうした?」



決意の込められた蒼い瞳に嫌な予感がして、唯は思わず身構えた。



「ちょっと、大事な話があるんだけど……今から私の部屋に来られる?」



「え……」



大事な話って……唯の気持ちには応えられないという話だろうか?



(……嫌だ。行きたくない……)



姫花を守り続ける覚悟はしていたが、姫花と離れなければいけないという覚悟は、全くしていなかった。



「都合悪い?」



姫花に上目遣いで見上げられ、



「いや……大丈夫」



気持ち的な方が全然大丈夫ではないが、唯は頷いてしまった。



「じゃあ、唯がこの間美味しいって言ってた紅茶淹れるね」



そんな優しい姫花の声が、今の唯には切なく聞こえてしまう。



振るつもりなら、優しくしないで欲しいのに。

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