第61話

「それ、ちゃんと先輩に話した?」



「……話してない」



どうしても、唯を目の前にすると素直になれないことがある。



それも、姫花が唯を遠ざけてしまう理由だったりする。



「姫ちゃんって、結構恥ずかしがり屋だよね」



「……えっ?」



姫花は、思わず俯けていた顔を上げて梅本を見た。



自分では、素直じゃないだけだと思っていたから。



「先輩も多分、姫ちゃんの恥ずかしがり屋の部分には気付いてなさそうだけど」



あの先輩鈍いから、と梅本は笑う。



「もう一度、ちゃんと話し合ってみたら?」



「……でも……」



何と言えばいいのか?



「確かに鈍い人だけど、姫ちゃんの話はちゃんと聞いてくれる人でしょ?」



「うん……」



確かに、そうだ。



唯なら、姫花のこの複雑な気持ちとも、ちゃんと向き合ってくれると思う。



「……今度、話してみようかな」



「うん、頑張って」



梅本は、姫花にガッツポーズでエールを送った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る