第59話

姫花が唯に告白された日から、数日が経過していた。



唯は以前と変わらず、通学時の姫花の送迎を欠かさずしてくれている。



ただ一つ変わったことは、



「おはよう、姫花」



「お、おはよう、唯」



挨拶をすっ飛ばして姫花の容姿を褒めていたのが、ぱったりとなくなったこと。



ロクに挨拶もしなかった唯が、ここ数日の間、しっかりと“おはよう”と言っているのだ。



以前は鬱陶うっとうしくて仕方がなかったやり取りだが、



「……」



明らかに元気をなくした様子の唯からの挨拶は、何だか寂しく感じる。



唯をそんな風にしてしまったのは、紛れもなく姫花ではあるのだが。



「姫ちゃん。最近、市川先輩と何かあったの?」



教室の席に着くなり、梅本が駆け寄ってきて問いかけた。



「えっ、なんで?」



「先輩、めちゃくちゃ元気ないから」



「やっぱり、そう見えるよね」



姫花は、胸がズキッと痛むのを感じた。



「見るからに“フラれた人”って感じがする」



梅本の言葉に、



「……」



姫花は黙ってしまい、



「……えっ? 姫ちゃん、もしかして先輩のことフッたの?」



梅本がすかさず反応した。

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