第58話

そういえば、姫花の部屋は頼斗のすぐ隣だったことを思い出した唯は、



「……」



顔を真っ赤にして俯いた。



でも、そんな変な内容は話していないはずだ。



「大体、私のことを憶測で勝手に色々言うのやめてよね!」



姫花が怒っているのは、どうやら頼斗に対してのようだ。



「憶測?」



「蛙化現象だとか……そんなんじゃないんだから!」



「……」



蛙化現象ではない。



それを聞いた唯は、ホッと胸を撫で下ろした。



「あぁ……じゃあ、最初っから唯のことは好きとかそういう感情はなかったってことか」



また勝手な解釈をしてしまう頼斗。



蛙化現象以前の問題で、そもそも意識すらしていなかった説が出てしまった。



「……」



唯は、今度こそ本気で落ち込んだ。



双子の台詞に一喜一憂する唯の様子を、



「……唯君? 顔色悪いけど、大丈夫!?」



開け放たれたままだった扉から双子の母が見てしまった。



「ご飯出来たけど、食欲ある?」



「あ、はい……ありがとうございます」



本当は食欲なんてすっかり失せてしまったけれど、唯は小さく頷いた。



「なんでアンタはいっつも余計なこと言うのよ!」



「姫花がいっつも肝心なことを言わないからだろ!」



双子の言い合いは続いている。



「2人とも、やめなさい!」



母の一声で、



「「はぁい……」」



やっと室内が静かになった。

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