第57話

「俺、どっかで何か間違えたかなぁ……」



頭を抱えて悩む唯に、



「そもそも、相手が姫花な時点で間違えてんじゃねぇの?」



頼斗はどこまでも他人事ひとごとな顔をしている。



「……俺は、付き合うなら姫花としか考えてない」



「物好きだよなぁ」



「そういうお前は、好きな女とかいないのか?」



「……」



唯の質問に、頼斗はしばらく黙り込んで考えた。



「そもそも、好きが分かんねぇし」



「……校内一モテるのに、勿体ないな」



唯は、驚いたように少しだけ目を見開いた。



「俺もそう思う」



頼斗は真面目な顔で頷いた。



「モテ男のお前なら、こういう時はどうする?」



唯は、ローテーブルの向かいに座る頼斗をチラリと見た。



「俺はまず、自分から告白なんてしたことないからな」



「話にならないな」



「唯こそ、今までの経験上どうなんだよ?」



「……俺はまだ誰とも付き合ったことがないからな」



言いにくそうに答えた唯に、



「あー……」



頼斗は察しの眼差しを向けた。



と、その時、突然部屋の扉が勢いよく開いた。



「……ねぇ。2人の会話、全部私の部屋に筒抜けなんですけど」



相変わらず頬を赤く染めたままの姫花が扉の所に立っていて、



「姫花、ノック忘れてる」



あまり気にしていない様子の頼斗が姫花を注意した。

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