第50話
「好きな子に可愛いって言えないなんて、辛すぎる」
「お前の日頃の行いのせいだろ?」
頼斗はごもっともなことを言うが、
「だから最近は、からかわずにちゃんと本音を伝えてるだろ」
唯なりに考えて真剣に向き合っているつもりだった。
それが、何故か姫花には伝わらない。
「あー……あいつ、ちょっと性格歪んでるから、捉え方も歪んでるかもなぁ」
「……おい。姫花は性格も可愛いぞ」
唯が、頼斗を鋭く睨みつけた。
「物好きなことで」
頼斗は、やれやれと肩をすくめた。
「でも、今日は唯のお陰でマジ助かったよ」
「助かった、か……」
真っ暗になった空を見上げながら、意味ありげにぽつりと呟いた唯に、頼斗は首を傾げる。
「俺、今何か変なこと言ったか?」
「……姫花を助けたってことは、最初から姫花を守れてなかったってことだ」
「あ……」
唯の悔しそうな表情を見て、やっと気付いた。
「俺がすぐ隣にいたのに、一瞬でも姫花に怖い思いをさせたことが許せない」
ぎゅっと握り締めた唯の拳が、小刻みに震えている。
「もう二度と、姫花にあんな思いはさせたくない」
真剣な眼差しで語る唯を見て、頼斗は思うことがある。
唯の傍にいる時の姫花は、とてもリラックスしているように見える。
きっとそれは、唯の姫花を想う気持ちが少なからず伝わっているからではないかと。
だから――
あとは、どちらか片方が告白さえしてしまえば、全て丸く収まるはずなのに、と。
まぁ、どちらも素直な性格ではないから、簡単には上手くいかないだろうけれど。
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