第48話
そんな折、唯と電車を利用する機会があり、何も知らない唯は姫花と車内の通路に立ちながら、ただぼーっと窓の外を眺めていたのだが――
姫花が唇を噛み締めて涙を堪えているのに気が付いた。
視線を下げると、姫花のスカートの中に入っている太い腕。
その腕の主は見知らぬオッサンで、涼しい顔をしてひたすら姫花を触っていた。
「っ!」
カッと瞬間的に怒りが込み上がり、
「うわぁぁ!? 何だこのガキ!」
気付いた時には、そのオッサンに殴りかかっていた。
唯はその後、いきなり暴力という手段に出たことを周りの大人たちから注意はされたが、それ程強く
今となっては、大きな怪我をさせない程度に取り押さえる術を身に付けている。
そして、姫花が声を出せなくなった理由も理解しているので、電車に乗っている間は常に姫花の様子を窺うようにしている。
唯にとってはそれが当たり前のことになっているが、姫花にとってこんなに心強く有り難いことはない。
好きになるなという方が無理な話である。
(やっぱり唯が好き……大好き)
姫花の唯に対する気持ちは、日を追うごとに大きくなっている。
でも――
(私は唯のタイプじゃないんだもんね……)
告白しても、きっとフラれるだけだ。
最悪の場合、今までのように優しく接してくれることもなくなるかもしれない。
そんなことになるくらいなら、このままただの幼なじみとして過ごしている方がずっといい。
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