第43話

「姫ちゃんの彼も、きっとビックリするよ!」



笑顔の梅本に言われ、



「ん? 私の彼?」



姫花は目をしばたいた。



「え? 市川先輩と付き合ってるんじゃないの?」



「……私が、唯と!?」



そう思われていたことの方がビックリだ。



「毎日一緒に帰ってるから、てっきりそうだと……」



梅本も何やら驚いている。



「通学は、私が痴漢とかストーカーに遭いやすいから、守ってくれてるだけで……」



中学生の頃から電車に乗れば痴漢に遭うことが多かった姫花を心配して、毎日唯が守るようにして一緒に電車に乗ってくれている。



「でも、それって好きな子にしか出来ないことだよ?」



梅本は、1人でキャーと騒いでいる。



「……私は、唯の好みのタイプとは正反対だもん」



十分理解していることなのに、言葉として口に出すと傷付いてしまう。



「じゃあ、姫ちゃんは好きなんだ? 市川先輩のこと」



梅本のそんな声に、



「……うん」



姫花は顔を真っ赤に染めて小さく頷いた。



と、その時、



「姫花ー! 委員会終わったぞー!」



教室の扉がガラッと勢いよく開き、頼斗が侵入してきた。



頼斗も、実は隣のクラスの学級委員長であるため、今回の委員長会議に出席していたのだ。



「あ……校則違反をしてる女子2名発見」



目敏めざとい頼斗は、姫花と梅本のメイクにすぐに気が付いた。

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