第41話

「……唯は……」



まだ姫花の頭を優しく撫でている唯の顔を、そっと見上げた。



「うん?」



「父さんみたいにならなくていいよ」



「え……?」



ドキッとした唯は、思わず姫花から手を離した。



“もう十分、いい男だよ”



そう伝えたかったのに――



「唯にはそのまま、地味なままでいて欲しい」



何故か余計なことを口走ってしまい、



「……え? 唐突な悪口!?」



唯をかなりヘコませた。



「え、あ……ごめん、そんなつもりは……!」



自分でも、こういう所が意地悪で性悪だと思ってしまう。



どうして唯に対しては素直に気持ちを伝えられないのか。



父は、あんなにも真っ直ぐに母に気持ちを伝えているというのに。



自分は、その素直さを受け継ぐことは出来なかったようだ。



「……大丈夫。気にしてないから」



そう言ってまた姫花の頭を優しく撫でてくれる唯の顔は――未だに落ち込んだままだ。



「……ニキビを指摘したことへの復讐なら、受けるしかないよな」



――やはり、悪女だと勘違いされている。



(違うのにー!!)



姫花は違う意味でまた泣きたくなった。

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