第25話

なんだか最近、姫花に対する唯の態度が冷たい気がする。



明らかに、何か怒っている。



「あの……唯?」



唯の部屋のローテーブルで、唯と隣り合うようにして座っていた姫花は、恐る恐る声をかけた。



「……何だ」



「何か……怒ってる?」



「……別に」



顔を背け、テーブルの上に頬杖をついた唯は、やはり感じが悪い。



意地悪されることはよくあるが、こんな風に冷たい態度を取られたことなど今まで一度もなかったのに。



それでも、勉強を教えて欲しいとお願いしてきた姫花をこうして受け入れているのだから、唯が何を考えているのか全く分からなかった。



「……姫花」



「ん? 何?」



不意に名前を呼ばれ、唯の目を見る。



「お前、今好きなヤツとかいるの?」



「……えっ!?」



その質問に、姫花は慌てた。



唯のことを、諦めなければと思っている真っ最中なのに。



「……いるけど、諦めようと努力してるとこ」



とりあえずは正直に答えた。



「なんで?」



「……その人の好きなタイプが、私とは正反対のタイプみたいで」



唯からのこの尋問は辛すぎる。



姫花は、次第に顔を俯けていった。



「……ふーん」



冷たい相槌あいづちを打ちながらも、唯は内心ではかなり傷付いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る