第22話

他の人から容姿を褒められると胃が痛くなるのに、梅本だけは不思議と素直に受け止められる。



それは、彼女が“姫ちゃんファン1号”と名乗っているせいかもしれない。



「ねぇ、その相手ってこの学校の人?」



ふと何かを思い出したように目をギラッと光らせた梅本。



「……うん、まぁ」



「そう……」



梅本はそのまま顎に手をやり、考える素振りを見せてから、



「姫ちゃんさ、私がデザインしてる服のモデルさんを引き受けてくれない?」



姫花の両手をぎゅっと握り締めて懇願した。



「へ? モデル?」



「今度ね、夏向けのファッションショーがあるでしょ?」



この学校の家庭科部はなかなかに本格的で、年に4回、四季に合わせたイメージの洋服を作ってファッションショーなるものを開催している。



この家庭科部に入部していた人が、卒業後に有名なデザイナーさんになっているというのも、珍しくはない話だ。



「姫ちゃんにお願いしたくて、まだ誰にもモデル頼んでないの」



「……それなら、頼斗に頼んでよ。私から頼んであげるから――」



「桐生君はもう、他の子のモデル引き受けちゃってるから」



「えっ!?」



そんな話は初耳だ。



というより――



頼斗アイツが、女の子の格好を引き受けたの?」

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