第21話

学校に到着した姫花は、自分のクラスの席で大人しくしていた。



友達と呼べる存在は、今の姫花にはほとんどいない。



小学生の頃はまだ友達がいっぱいいたのだが、思春期を迎えた辺りからどんどんと減っていき、中学に入学する頃には誰もいなくなっていた。



その頃からだ――男たらしだのぶりっ子だのと言われるようになったのは。



それなのに、同性から嫌われて傷付いていた姫花に、昔と変わらず接してくれていた唯。



そんな唯に、恋をしないわけがないというのに――



また潤みそうになる瞳。



もう何年も泣くことを我慢していて、昨日久しぶりに爆発したからだろうか。



涙腺が緩くなりすぎていて困る。



「……姫ちゃん?」



唇を噛み締めて涙を堪えている姫花に、同じクラスの女子生徒が声をかけてきた。



この学校の家庭科部員でもある、梅本うめもと 希美のぞみだ。



「あ、梅ちゃん……おはよう」



この学校で唯一とも言える、姫花の友達だ。



「目が腫れてるけど、どうしたの?」



「あー……実は失恋しちゃって」



えへへと笑って言うと、梅本はくわっと目を見開いて姫花の両肩を掴んできた。



「姫ちゃんを振るアホが存在するの!? この世に!?」



「振られたというか……相手の好みのタイプと私が正反対だと知ったというか」



「姫ちゃんこんなに可愛いのに!」



「……ありがと」

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