人は見かけによる? よらない?

第18話

どんなに悲しくて辛くても、朝というものは勝手に押しかけてくるもので。



泣き腫らした重い瞼を冷たい水でこじ開けた姫花は、重い足取りでダイニングテーブルへ向かう。



いつも通りに先に朝食を食べている父と目が合ってしまい、慌てて顔を背けた。



「……おはよう、姫花」



姫花の目が腫れていることに気付いた父が、様子を窺うように挨拶した。



「……はよう」



とりあえず挨拶し返すと、



「……俺の顔を見て溜息をつく癖は?」



恐る恐るな様子で訊ねられた。



「……」



「……無視か?」



口数がそんなに多いわけではないのに、何故だか今日は特に父が鬱陶うっとうしいと感じる。



「姫ちゃん、おはよう」



パンケーキを載せた皿を姫花の前に置いた母は、



「はい、これ」



ハンカチで包んだ保冷剤を手渡してくれた。



「今のうちに冷やしておいた方が、少しはマシになるよ」



「ありがと」



母の優しさが身にみる。



母はきっと、姫花が一晩中泣いていたことを知っている。



その上で何も聞かず、姫花の大好きなパンケーキを朝食に焼いてくれたのだ。



本当は何を食べても今の姫花には味なんて分からないのだが、その母の優しさだけで十分だった。

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