第15話

「いくら姫花の気が強いって言っても、上級生の教室に行くのは怖かったと思うけど」



コントローラーをポチポチと連打しながらも、頼斗の指摘は的確だ。



「……だから俺が行くまで待ってろって言っておいたのに」



「お前があまりにも遅いから、心配になったんだろ」



頼斗は相変わらず、唯の方を一瞬たりとも見ずにゲームに集中している。



「……可愛すぎるだろ」



ぼそりと聞こえた唯の独り言に、



「……」



頼斗は一瞬だけ呆れた眼差しを唯へと向け――



「……へっ?」



一瞬だけのつもりが思わず二度見し、そのまま固まった。



「……」



右手の甲で口元を押さえ、軽く俯いた唯の顔が、真っ赤に染まっていた。



初めて見る種類の唯の表情に、頼斗は驚いて唯を凝視し――



「……あ!」



プレイ中のゲームのキャラクターが、モンスターにやられてゲームオーバーになった。



良いところだったのに。



「お前、今まで姫花の顔見る度に可愛い可愛いって散々言っておいて、今更何言ってんの?」



コントローラーを床に置くと、ベッドに腰掛けている唯を体ごと振り返って見上げた。



「……顔は本当に可愛いし、皆もそう言ってるから俺も言いやすいだけだ」



「……」

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